バッタを倒しにアフリカへ

この本は先日発表された光文社新書大賞で1位を獲得したものだ。ひとことで言うとかなりぶっ飛んでいておもしろい。読者の投票で受賞したのがうなずける。書店に並んでいたら思わず手に取ってしまうようなインパクトのあるカバーだ。(僕は思わず手にとって、思わず買ってしまった!)

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この緑色の変なおじさんが著者の前野ウルド浩太郎なのだが、彼は小さい時からバッタが好きで「バッタに食べられたい」という夢があった。そんな変わった性癖をもつ著者が人類を救い自身の夢を叶えるために、バッタと大人の事情を相手に死闘を繰り広げた日々を綴った1冊だ。

 

 

著者はバッタの研究をするために単身でアフリカに行き、ひどい生活環境の中で多くの絶望を味わいながらもバッタへの熱心な心を失うことはなかった。

だから僕は、絶望の淵に立たされて途方にくれている若者にこの本を強くオススメしたい。

少し大げさかもしれないが、これを読めば少しは心が軽くなって自分の置かれている環境がどれだけ恵まれているかを知ることができるだろう。

 

著者はアフリカのバッタ研究所で現地の詳しい状況やアドバイスをしてくれるババ所長と出会う。悩み事を聞いてくれる相談役にもなってくれて、著者を何度も励ましていた。

そんなババ所長が著者を救った一節を紹介したい。

所長は何かを思いつき、コータローに見せたいものがあると、パソコンでスライドショーをはじめた。スライドには、悲惨な写真がずらりと並ぶ。

「もし、あなたの給料が低いと考えているのなら、彼女はどうか?」と、物乞いをしている女の子の写真が表示された。

「もし、あなたの交通手段に文句を言うのなら彼らはどうか?」と、吊り橋を渡る人々の写真が表示された。

文字を書くのにパソコンを使う人と地面の砂に書く人、ナイキやアディダスなどの靴の選択肢を持っている人とペットボトルを潰し、それを靴代わりにするしか選択肢のない人……。

「あなたが不満を持っているのなら、周りを見回してあなたが置かれている環境に感謝すべきだ。幸運にも私たちは必要以上に物を持っている。際限なく続く欲望に終止符を」とメッセージが添えられていた。

 

「いいかコータロー。つらいときは自分よりも恵まれている人を見るな。みじめな思いをするだけだ。つらいときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。お前は無収入になっても何も心配する必要はない。研究所は引き続きサポートするし、私は必ずお前が成功すると確信している。ただちょっと時間がかかっているだけだ」

 

肩をがっつり叩いて励ましてくれた。

 

これは著者が無収入状態になったとき、日本に帰って給料をもらいながら別の昆虫を研究するか、無収入ながらもアフリカに残ってバッタの研究を続けるか決断しなければならないときにババ所長が著者を評価して話した言葉だ。著者はこの言葉をきっかけにアフリカに残ってバッタを研究することを決めたのだった。

 

自虐ネタを含んだユーモアあふれる文章で、時間を忘れて没頭できる本だ。難しい専門用語も出てこないので気軽に読んでみてはどうだろうか。ただし、夏の公園で読むのはオススメできない。カバーにうつる緑のおじさんに誘われてバッタが群がってきてしまうだろう。

 

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)