イスラムが効く!

 

あなたは「イスラム」と聞いてどんなイメージを浮かべるだろうか。

私はこの本を読むまでは「テロ」が真っ先に思い浮かび、あまり良いイメージのない宗教だと勘違いしていた。

この本はそんな間違ったムスリムイスラーム教徒)のイメージをひっくり返してくれることはもちろん、イスラムの知恵で現代の日本が抱える問題を解決できるのだということを提案しているのである。

 

この本は様々な問題を抱えた社会人にぜひ読んでもらいたいと思う。

なぜなら、イスラムの考え方を知ることで病気・人間関係・お金・仕事・家族・介護など、現代の日本の社会人を悩ませる問題を解決に導いたり、和ませたりしてくれるからだ。

 

日本では「○○の者です。」と肩書きで自己紹介する人がほとんどだ。国や会社、学校に対する「帰属意識」が日本人のストレスになっていることは少なくない。例えば「私は日本人だ」とか「私は〇〇大学です」だとか。

しかし、イスラムの世界ではそういうものにとらわれない生き方をしているのだと著者はいう。

それはどういうことかというと、超越的な絶対者である神(アッラー)に帰属しているというのだ。

日本人との決定的な違いは帰属しているものが「超越的な絶対者」であることであり、これに帰属することによって人を楽にしてくれるのだ。自分の内面でしか確信できないものだから、もし自分の身になにか起きても「神が決めたことだからしょうがない」と思える。こうした考え方が日本人には必要なのではないかというのだ。

 

突然だが、ここでイスラムの世界を理解するために必要な言葉をひとつ紹介したい。

 「イン・シャー・アッラー

これはイスラム教の言葉で、「神(アッラー)が望みたもうならば」という意味だ。ムスリムはこの言葉を未来のことを言うときに必ず使う。

いかにも、普通に考えてありそうなことを思考して「明日にはこうなるはずだ」と思ってやったことが、実際には起こらないということは当然あります。そのときに、「イン・シャー・アッラー」という言葉を言わなかったからだ、という逸話が出てくる。これは日本的に言うと、「人事を尽くして天命を待つ」ということです。(中略)「イン・シャー・アッラー」というのは、「あとは神様がこうしてくださいますように」という祈り。祈ることしかできない。

なにか約束していたことができなくなってしまってもそれは神が望んだことだからしょうがない、と。

ビジネスの世界でもこれを使うそうで、よくそれでビジネスが成り立つなと思うが、現にイスラムの世界では1400年もの間このようにやってきたというのだからなるようになるものらしい。

要するに日本人は、自分にはどうしようもできないことで頭を悩ませすぎなのではないかということである。

 

この本の著者は同志社大学教授の内藤正典氏とイスラム学者の中田考氏の対談の内容を加筆修正してできたものである。中田氏はイスラム入信しムスリムとして生活している方だ。日本で一番イスラムを知っている人といえるし、見た目もなんだかムスリムっぽい(笑)

 

いま、世界の4人にひとりがムスリムである。いずれ3人にひとりになることは間違いないそうだ。来年には東京オリンピックも控えているから、いまよりも更にムスリムの観光客やビジネスマンが増えるだろう。

そんな中で日本人はイスラムに誤解を抱いている人が多いのではないだろうか。

ぜひこの本をきっかけにイスラムに対する偏見をなくし、関心を持ったり、理解を深めてほしい。

 

 

 

イスラムが効く!

イスラムが効く!