あなたが○○で死ぬ確率はどれくらい!?『もうダメかも――死ぬ確率の統計学』

一度「面白そう!」と思った本はためらうことなく買うことにしている。

しかしばかり今回この本は買おうかどうか少し迷ってしまった。

税込3960円……高い。

それだけ素晴らしい情報が詰まっているのだろうと思い切って購入。

……期待は裏切られなかった。

500ページほどもあるハードカバーの本から圧倒的な情報量で様々なリスクについて書かれている。

本書ではリスクには2つの顔があるとして『無感情で型にはまった計算に徹する顔』と『人間くさい希望と恐怖に満ちた顔』であるという。

この二つを一度に見る、というのが本書の普通ではない目的だ。

リスクというものを語るときに欠かせないのが数字であるが、それだけではなくリスクにまつわる人とその物語をみせてくれるのが本書の特徴といえる。

1から27章に分かれてリスクを分析し、「マイクロモート」と「マイクロライフ」という2つの単位を使ってわかりやすく述べられている。

「マイクロモート」というのは死亡確率100万分の1のことで、リスクを一貫性のある尺度で微小な率ないし1日当たりの率に変換したものだ。
普通に生活して過ごす1日のリスクは約1マイクロモートで、そんな普通の日に命に関わる恐ろしい出来事が起こる確率は100万分の1ということである。

イギリスの本なのでイギリスのデータばかりだが例えば散歩43キロ、バイク運転11キロ、鉄道12000キロの移動で1マイクロモート。
出産は120マイクロモート、スカイダイビング10マイクロモート、小惑星が飛んできて死ぬ確率は世界で生涯を通して1マイクロモートだそうだ。

では「マイクロライフ」はどうだろうか。
これは、肥満のような慢性的なリスクを表すときに使われている

成年の人生を100万等分したとしよう。
マイクロライフとは等分された1個のことで、持続時間は30分である。
この長さは、若年成人には平均100万”30分の寿命が残っている、という発想に基づいている。

30分という塊は1日に48個ある。

これを人生の持ち分として好きなことに好きなように使えると考えてみよう。

青年人生全体分としてこの小さな塊が100万個あって、それぞれが30分に値し、自由に使えるのだ。

野球中継を見る?ポンと6マイクロライフが出ていき、戻ってこない。

ただただ普通に過ごしていてもマイクロライフは減っていくし、身体に悪いものを食べたり不健康なことをするとどんどん減っていく。

人生の残りの持ち分をどのようなスピードでつかっているかがよくわかるリスクの単位なのである。

本書ではこの二つの単位の違いをこのように説明している。

バイクに乗って死ななかった場合、マイクロモートはご破算となり、翌日はゼロからスタートする。

それに対し、1日中たばこを吸い、ポークパイを食べて生きている場合、マイクロライフの消費は積算される。

毎日買っているくじが永遠に有効というようなもので、当たる確率がどんどん高まるのだ。

この場合は当たってほしくないわけだが。

『確率とはある意味、人間がこれからも存在するであろうことの確からしさにも似たものだけど、その確からしさが誰についてのことかは何も教えてくれない。
』と著者は述べている。

つまりこの本が読者に教えてくれるのは僕たちに関するごく一部のことなのかもしれない。

もっともらしくこの本ではリスクについて書いてあるが、それでも自然のことや経済・ライフスタイルのことはリスク以外にも様々な価値観を含めていかなければ説明することは出来ない。

あなたはリスクにどんな気持ちで向き合っているだろうか。

人によってリスクの捉え方は様々である。
どこまでいってもそれは何が正解かは結局わからないだろう。
だからこそ、この本を読んでその様々なリスク観に触れあい、考えるのもいいかもしれない。

明日あなたの身に何かが起きるリスクは……?